映画『アクトレス〜女たちの舞台〜』のオリヴィエ・アサイヤス監督、女優たちを語る

ジュリエット・ビノシュ主演、クリスティン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツが競演という華やかなキャストが話題の映画『アクトレス ~女たちの舞台~』。オリヴィエ・アサイヤス監督が女優たちについて語ったインタビューをご紹介します!
© 2014 CG CINÉMA – PALLAS FILM – CAB PRODUCTIONS – VORTEX SUTRA – ARTE France Cinéma – ZDF/ARTE – ORANGE STUDIO – RTS RADIO TELEVISION SUISSE – SRG SSR
アクトレス~女たちの舞台~2ショット


映画『アクトレス〜女たちの舞台〜』は、かつて一世を風靡した大女優の孤独と葛藤、そして美しさを描いたドラマ。大女優マリアをジュリエット・ビノシュ、彼女のマネージャーをクリステン・スチュワート、若いお騒がせなハリウッド女優をクロエ・グレース・モレッツが演じています。

Q:主人公のマリアのキャラクターは、どのように決めたのですか?
アサイヤス監督:
マリアとジュリエットを切り離して考えることはできないのですが、マリアはジュリエットを巡るキャラクターとして私が空想して作り上げた人物です。実際にはマリアとジュリエット本人は、似ているところもあれば違うところもあるでしょうが、ジュリエット自身もこの役を演じることを楽しんでいたと思います。マリアの役は映画を観る人が「ジュリエット・ビノシュはきっとこういう人だろう」と想像するジュリエットのイメージに似ているのではないでしょうか。ジュリエット自身も完全にマリアと同じではないけれども、そうなったかもしれない人物として楽しく演じ、自分を作品に投影してくれたと思います。
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アクトレス~女たちの舞台~2ショット
Q:クリステンとクロエの起用について教えて下さい。
アサイヤス監督:
クリステンは確かに『トワイライト』の成功とメディアによって有名になりましたが、彼女はユニークな存在感のある稀有な女優だと思っていました。ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』の時から、端役でしたが存在感を示していました。彼女はとてもカメラ映りが良い、アメリカ映画の女優としては稀有な存在です。ハリウッドの大作に出ている彼女にとって、ヨーロッパのインディペンデント映画はリスクかもしれません。その代わり、私は彼女にはこれまでの映画では与えられなかったものを与えてあげられるのではないかと思いました。人工的に作り出された役柄ではなく、彼女自身のインプロビゼーション(即興)ができる十分な時間を与えました。それは人工的に作り出された登場人物とは違うものとなり、今回の私の演出によって彼女のキャリアのある一時期に発見があり、自分が想像しているよりももっと長く女優としてのキャリアを伸ばしていけるのではないかと思いました。クロエに関しては、当初成熟した大人な若い女性を探していたのですが、何よりも彼女には狡猾さがありました。役より実年齢がかなり若かったのですが、彼女に会って、彼女でいこうと決めました。結果的にはそれぞれの役で最初に選択した二人が出演してくれて、キャスティングは大成功したと思います。
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アクトレス~女たちの舞台~クリステン
Q:現場でのジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートのコミュニケーションはどのような感じでしたか?
アサイヤス監督:
ジュリエットとクリステンはそれまでまったく会ったこともなかったのですが、撮影の初日と2日目で冒頭の列車のシーンを撮りました。撮影を重ねるにつれて、彼女たちの間に徐々に信頼や友情や敬愛の気持ちが芽生えていったようです。もともとクリステンはジュリエットの生き方や仕事ぶりを見ていてリスペクトしていたそうです。ジュリエットとクリステンの関係がうまくいくことがこの作品にとって重要なポイントでしたから、準備の段階では不安になり、私は危険を冒しているのではないか? という気がしてきました。もしも、ジュリエットとクリステンの気が合わずに二人の間に緊張が漂ったら良い映画にはならなくなると心配しました。ところが実際にはまったくそんなことはなく、脚本を書いた時と違うものになったのは彼女たち自身の演技と力動性のおかげです。クリステンにとってジュリエットは、自由と精神のバランスを保ち続けてきた女優であり、そのメカニズムとビノシュのキャリアの道程を学びたいと思っていたようです。かたやジュリエットがクリステンのなかに見たものは、若いけれど映画に対する情熱があることです。お互いに刺激しあい、いい意味での競争心がありました。私はそんな二人を観察し、二人の関係が進展するのをドキュメンタリーのように撮影しただけです。
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アクトレス~女たちの舞台~風景1
Q:クリステンはセザール賞も受賞し、演技が高く評価されていますが、リハーサルはどれくらい行ったのでしょうか?
アサイヤス監督:私はもともとまったくリハーサルを行わないのです。セリフを言うときの自発性がリハーサルによって失われることを恐れています。俳優たちが初めてセリフを言う時には、もう現場のカメラは回っています。もちろん女優たちは、それぞれが自分で稽古をしてくるでしょうが、インプロビゼーションを大事にしています。クリステンはセリフ覚えが良く、その日の朝にセリフを覚えてきていました。
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アクトレス~女たちの舞台~クロエ
Q:女優たちがみなハリウッドで活躍していますが、本作のセリフについて、彼女たちはどのような反応を示していましたか?
アサイヤス監督:
三人ともこの映画がとてもユーモアのある作品だと理解していました。また、全員ハリウッドでの映画の経験があるので、ハリウッドが昔よりさらに産業的な側面を強めて、拘束も多く、自由にクリエイションする余裕がないことを知っています。皆が苦しんだとまでは言わないまでも、その重圧は感じていると思うので、そういったことに対して皮肉な距離をとっていることを楽しんだのではないでしょうか。なかでもクリステンは、映画を巡るメディア産業に斜めの視線をもたらしていることを楽しんでいたようです。
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アクトレス~女たちの舞台~メイン
『アクトレス ~女たちの舞台~』
10月24日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開
配給:トランスフォーマー
公式サイト

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