『ザ・ホエール』でオスカー獲得 ブレンダン・フレイザー来日「自分のすべてを注ぎ込んだ」

6日、映画『ザ・ホエール』で第95回アカデミー賞主演男優賞を獲得したブレンダン・フレイザー(54)が来日し、記者会見に出席しました。

『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』でのプロモーション以来、15年ぶりの来日となるブレンダンは、昨日は街歩きをしたり、しゃぶしゃぶを食べるなど、久しぶりの日本を楽しんだのだそう。

◆体重272キロの孤独な中年男性チャーリー役でオスカーを手に

先月開催された第95回アカデミー賞授賞式で、主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した『ザ・ホエール』。ブレンダン演じる体重272キロの孤独な中年男性チャーリーが、疎遠だった娘との絆を取り戻したいと願いながら過ごす最期の5日間を描いたヒューマン・ドラマです。メガホンをとったのは、チャレンジングな題材選びと、先鋭的な作風で知られる鬼才ダーレン・アロノフスキー監督。

監督について尋ねられると「観客に対して、自分がスクリーンに映し出すものから目を背けないことを要求する監督。非常に勇敢で怖いものがない。どんな役者も彼ほどの才能がある監督と仕事をしたいと願っているのではないかと思います」と語りました。

「とても紳士なんですが」と前置きしつつ「どのキャストにも要求するスタンダードがとても高いとわかっていたから、少し脅威に感じた」と監督の第一印象について率直なコメントも。それゆえ「一人の人間として、役者として、自分が持てるすべてを注ぎ込んだ」と役づくりについても明かしました。

チャーリーを演じるにあたって、さまざまなリサーチを実施し、そのうちのひとつとして、肥満症で苦しむ人やその家族などを支援する団体「OAC」(The Obesity Action Coalition)と一緒に仕事を行ったそうです。


◆「こうして身近に会えるようになって嬉しい」

コロナ禍のひどい状況だったなかで撮影されたという本作。ブレンダンいわく、現場は「実存主義的な脅威にさらされながら製作したという感じだった」のだとか。「それが再びみなさんにこうして身近に会えるようになって、世界がもとに戻って、本当に嬉しく思っています」と喜びを語りました。

「コロナ禍対策のため、感情のうえでみんなちょっと距離感があるなかで製作された。そう思うと2019年から2022年にかけて作られた映画は全部特別なんじゃないかと。毒に対する薬みたいな。何かいいものをつくろう、という努力がなされた映画たちなんじゃないかと思います。『ザ・ホエール』もみなさんを癒やすことができる、そういう可能性を持った、とても良質な映画ですし、関われたことをとても光栄に思います」

◆「勇気を持って欲しい」

「ハムナプトラ」シリーズなどで、ハリウッドのトップスターへ昇りつめながらも、心身のバランスを崩して、長らく表舞台から遠ざかっていたブレンダン。本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、ドラマチックな復活を果たしました。

「勇気を持って欲しい、ということをお伝えしたいです。勇気を持つということは、そこにそびえ立つ壁があることを認識することでもあると思うんですね。ヒーローというのは、必ずしも剣や盾や、ヘルメットをかぶっているものではないと思うんです。私達人間がなるべきヒーローはそういう形のヒーローではなく、自分の前に乗り越えなくてはならない壁があると認識することから始めるようなヒーローなんじゃないかと。そして自分自身が、これは自分の道のりなんだとしっかりと認識すること。勇気を持って必要なことをする。そうすると自分がたどり着きたい場所に少しずつ少しずつ近づいていけるんじゃないでしょうか。日本の方が『ザ・ホエール』をみたときに、チャーリーをとても勇気のある人間だと感じていただきたいですね。まったく想像もしていなかったかもしれないけど、彼はヒーローなんです。実際に人生においてのヒーローというのは、まさかそこからヒーローが生まれてくるとは思わなかったというところから生まれてくるように思うんです。チャーリーもその一人ではないでしょうか」

質問に対して、言葉を選びながら、丁寧かつ真摯に答える姿がとても印象的だったブレンダン。その言葉には、本作と同様に力強いメッセージがあふれていました。

『ザ・ホエール』
4月7日(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開
配給:キノフィルムズ

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