映画『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』クロード・ルルーシュ監督&ジャン・デュジャルダンのインタビューが到着!

9月3日よりBunkamuraル・シネマほかにて公開される、クロード・ルルーシュ監督最新作『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』。公開に先がけてフランスを代表する名匠、クロード・ルルーシュ監督と主演のジャン・デュジャルダンのインタビューが届きました。
アンナとメイン
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma 


映画『アーティスト』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたジャン・デュジャルダンは、働き盛りの大人の男の色気あふれるアントワーヌを自然体で演じています。
フランス大使である夫の愛を受け、全てを手に入れた女性に見えるアンナ役には、エルザ・ジルベルスタイン。
本作は、フランス映画のエスプリが詰まった会話と、あふれる旅情が奏でる、まさに“愛の前奏曲”です。
脚本・監督のクロード・ルルーシュのインタビュー
■この映画がはじまったきっかけ
「この映画は、様々な状況がうまい具合に重なり合って始まった。私が別のプロジェクトをやっていた時、エルザ・ジルベルスタインとジャン・デュジャルダンから電話をもらったんだ。2人が、ただ私と仕事をしたいと思っていることを知らせたかったという、それだけのものだった。そして、次にインドとの“啓示”のような出会いがあった。彼らとお互いに考えていることを話していくうちに、私好みのラブストーリーが浮かんできた。ジャンとエルザが私を突き動かしたんだよ。彼らは思いもよらないカップルになる可能性を秘めていた。お互いに違いすぎるからこそ、理想的なカップルになるはずだ、と」
「ジャンとエルザのことを考えながら、私は大急ぎで脚本を書き上げた。2人は私の執筆作業を見守り、その工程を楽しんでいた。2人はそれぞれ極めてユニークなやり方で、今の映画の新しいトレンドを教えてくれた。こうして私は初めて“熱意ある要望”に応える形で映画を作り上げたんだ」
■愛とインドと、コメディ
「愛は人間にとって、一番の関心事だ。ラブストーリーほど満足感を味わえるものはないと同時に不快なものもない。つまり愛というのは混沌としたものであるがゆえに、驚くべき展開となる可能性があるんだ。事実、愛はこの映画の唯一のテーマだ。愛に限界はない。誰かが誰かを深く愛していても、別の人間を好きになることもあるということを描きたかった。私にとって愛とは、あらがうことのできない麻薬のようなものだ」
「私はコメディを作りたかった。そしてそれ以上にラブストーリーの陳腐なパターンを打破したかったんだ。インドはこの作品のキー・キャラクターのひとつだ。ずっと私は、インドに行くべきだと言われ続けてきた。私の哲学や世界に対する物の見方や前向きな態度、映画に盛り込んだものを見て彼らはそう言っていたのだろうが、やっと75歳にして、かの地を訪れた。思っていたとおりの国だった」
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© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma 
■アンマについて
「この映画で体験したあらゆる奇跡の中でも、アンマとの出会いは最高のものだ。周りの人たちを抱擁して、愛を振りまいている彼女の話を小耳にはさみ、素晴らしいアイデアだと思った。私は彼女が生まれた南インドのケーララに出向いた。彼女は毎日、数百人の人間を抱きしめているが、1人として同じ気持ちにはならない。それぞれが別々の人生を抱えてやって来るからね。
私は数時間滞在して、彼女を見ながら、映画に収められないかと考えた。アンマには神々しさがある。私は人生で数千人と出会ってきたが、彼女は最も印象深い人の1人だ。側近を通じて映画にいただけないかと頼み、俳優たちと一緒にアンマが出演する許可を得た。彼女は俳優たちがいつ来るか知らなかった。ジャンとエルザは群衆に交じっていて、彼女は2人を他の人たちと同じように扱ったんだ。それまで彼女はどちらとも会ったことがなかったし、演技すらしなかった。私は彼女にもジャンにもエルザにも演技を求めなかった。まるでカメラ抜きで彼女に会いに来たというように、2人はアンマに会ったんだ。それはすごい光景だった」
■人生を謳歌することについて
「私が愛してやまないことが2つある。それは人生と映画だ。映画が私に人々が人生を謳歌できるようなものを作らせてくれる。この世の怖さを痛いほど分かっていても、私は世界を愛している。だから多くの人にも愛してほしいんだ。ネガティブなものがポジティブなものより、重要になってきている世の中に私たちは生きている。悪いニュースがいいニュースを凌駕している世の中だ。でも映画を1本作るたびに、どうしたら人々がこの世の中を、より好きになってくれるかを考えてきた。私は映画の持つ力が人の心を2時間で変えられると信じている。ちょうどアンマが30秒人を抱きしめることで、その人を変えられるようにね。中には文明社会を破壊しかねない映画もある。この世界を愛する私の思いが、映画を通して広がることを願っている」
アントワーヌ役のジャン・デュジャのインタビュー
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© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma 
■ある出会い
「クロード・ルルーシュは、僕が監督というキャリアに期待するものをすべて兼ね備えている。彼は頭が柔らかく複合的な発想ができる人間で、俳優に裁量を与え、自由な演技や台詞の変更もいとわない。映画製作で私が好きなところは、クルーたちとそういう環境で2~3か月過ごせることだ。クロードもそんな環境が好きなんだよ。彼は映画製作を楽しんでいて、毎日のように自分の脚本に手を入れるんだ」
「このプロジェクトは、いろいろなことが素早く結びついたんだ。3人が会った時、エルザと僕にはやりたい明確なアイデアがあった。僕らの頭にあったのはクロードの作品『あの愛をふたたび』(1970)の冒険版ラブストーリーで、地球の反対側で撮影するというものだった。するとクロードが、こんなアイデアを出してきた。『君はアントワーヌ・アベラールという作曲家で、エルザは外交官の妻だ』とね。これでポーン(チェスの駒)はセットされた。インドが舞台という最高のアイデアも出てきた。旅は恋愛を育てるという、まさにクロードの世界だ。そこが彼の映画の好きなところだ。独自で組み立てていき、皮肉を加えない。彼の映画はロマンチックでおかしくて、不合理で残酷だ。人生と似ている。クロード・ルルーシュと2人のキャラクターとインド…、もう映画は完成したようなものだ。何でも可能だったんだ」
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■演じるにあたって
「インドについては何も知らなかったが、それが良かった。僕は何の先入観も持たずに、文化的なギャップを経験したかったんだけど、それは空港に降りた途端、始まったよ。僕は何の疑問も抱かずに映画とキャラクターに取り組みたかったんだ。僕の世間的イメージや人がどう思うかとか、自分はどうすべきで、どうすべきではないのかというようなことを考えるのを毎日、払拭しようとした。熟考は俳優にとって悪なんだ。クロードとの仕事は、僕にとっていいことずくめだったんだ。
僕は短いキャリアの中で素晴らしい経験をしてきたが、今回のようなやり方で演じたことがなかったので、感慨深いよ。あそこまで自分を解放したことがかなった。こんな映画は、後にも先にもないだろうね」
「この映画のお陰で、大勢の中の1人に戻れ、楽しんで演じることができた。クロードは僕の重荷を取り除いてくれたんだ。僕は『アーティスト』で、アカデミー賞を受賞して神経過敏になっていたからね。プレッシャーと期待が大きすぎて、演じて楽しむという僕が一番好きな映画の世界から距離を置いていたんだ。クロードとの仕事は、コメディグループの仲間とコントを書いたり、演じていた時のような感じだった。あの時より僕はのめり込んだ。どの映画よりも自分らしいと感じた」
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© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma 
■インドの衝撃
「インドみたいな国は他にない。新たな発見があり、自分を反省し、ショックを受け、心を動かされ、美しいものや見たくないものを目にする国だ。よく何もない国だと言うが、本当に何もない国だ。そんなことがあり得るのかと思えることが山ほどある。だがインド人たちは働き、生き伸びているんだ。いわば永遠のカオス状態だ。旅行という概念が覆ってしまう。10日も過ごすと、だんだんそのことに慣れてくる。とりわけ素晴らしく有能なインド人スタッフと仕事をしてみるとね」
■撮影中のエピソード
「僕らは順番通りにこの映画を撮影していたけど、あれは信じられないくらい贅沢なやり方だよ。映画というのは、順番に撮影されることなんてないからね。僕らは1日演じたことの上積みができた。より真実味のあるものを翌日、やることもできた。毎晩だって映画全体を再現することもできた。書き上がっている脚本がある上で、クロードとエルザと話し合いながら始め、再構成をしたり書き換えたりした。エルザとの絡みは、お互い何度も驚かされることがあった。たとえば僕らが列車で旅をしていた時、彼女は僕が物真似をすることが分かっていた。彼女は警戒していたけど、僕は詳しいことは言わないでおいたんだ。そんなことをすれば彼女はリアクションを用意しかねないからね。撮影は3人のゲームだったんだ。クロードは僕の隣に立ち、僕が彼女に言うべき台詞を耳打ちしたが、その前に彼女には別のことを言いたかった。あれはすごくまごついたよ。僕ら(の仲)は物語の中で同じように進行していたんだ」
■『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』について
「この映画は今の時代には非常に珍しいものを観客に見せるはずだ。それは今の映画業界では二度とできないものだ。映画館で上映するための映画であって、テレビ用じゃない。テレビという枠のために、企画して、脚本を書き、予算を取ったものじゃない。この映画は映画館向けに、映画らしい感動を大きなスクリーンで観せるために作られたものだ。それも本物のインドが舞台で、決して絵ハガキ的な観光映画じゃない。本当のインドを舞台に感動的なストーリーがじっくり観られる。映画館で観る映画だ。こんな作品は滅多にないよ」
STORY

映画音楽家のアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は、自分が作曲してきた映画の主人公のように、飄々とユーモアにあふれた人生を謳歌していた。そんな折、ボリウッド版『ロミオとジュリエット』作品の製作のためにインドを訪れた彼は、フランス大使の妻アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)と出会う。愛する夫との間に子供を授かりたいと願う彼女は、聖者アンマに会うためにインド南部の村まで巡礼の旅に出ると言う。多忙なアントワーヌもしばしの休養を求めて、アンナを追って2日間の旅に出かけることを決めた―。

アントワーヌ01
『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』
9月3日(土)よりBunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

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