『インランド・エンパイア 4K』撮影、演出、メイクまで――メイキング映像が映す、デイヴィッド・リンチの現場

2026年1月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開のデイヴィッド・リンチ監督、最後の長編映画『インランド・エンパイア 4K』のメイキング特別映像が公開された。

この度公開された映像は、メイキングと、それに対応する本編シーンを交互に映し出した構成となっている。長年にわたりリンチ監督作品に多数出演してきたハリー・ディーン・スタントンに演技指導を行う様子や、ローラ・ダーン演じる主人公ニッキーが吐血する強烈なシーンについて、カメラマンに画角の指示を出し、ダーン本人に演技について具体的な指導を行う場面が収められている。吐血する体勢やタイミング、回数に至るまで徹底的にこだわるリンチの姿からは、演出への執念がありありと伝わってくる。さらに、ダーンの顔面が泥をかぶったように黒く染まる印象的な仕上がりは、リンチ監督自身によるメイクアップであったことも本映像から明らかに。

そのほか、ロケ地を巡る様子や、ウィリアム・H・メイシーに電話でアナウンサー役の起用を打診する場面、撮影に使用された小型で機動性の高いデジタルビデオカメラ“SONY PD-150”を手に、自ら撮影しながら演出指示を出す姿も確認できる。本作が、監督・脚本にとどまらず、撮影、音楽、編集に至るまでリンチ自身が手掛けた、極めて濃密な一作であることを明確に示すメイキング映像だ。

2025年1月15日、78歳で生涯を閉じた映画監督デイヴィッド・リンチ。1976年のデビュー作『イレイザーヘッド』以降、“カルトの帝王”として、世界中の映画人と観客を魅了し続けた巨匠。長編映画はわずか10本。その最後を飾る2006年製作の『インランド・エンパイア』がリンチ自身の監修によって4Kリマスター化され、『インランド・エンパイア 4K』として2026年1月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開されることが決定した。

本作は、監督・脚本から撮影・音楽・編集に至るまでリンチ自らが手掛けた、最も濃密な一作。ローラ・ダーン演じる、映画への主演が決まった女優を主人公に、現実と映画の境界が次第に曖昧になっていく悪夢のような不条理劇を描く。その蟲惑的な難解さに満ちた内容に、本人が残した言葉はただ一つ――“about a woman in trouble”(トラブルに陥った女の話)。謎が謎を呼ぶ物語は、公開当時から賛否を巻き起こし、いまもなお伝説として語り継がれる。

制作の発端は、近所に越してきたローラ・ダーンとリンチの偶然の再会から。リンチは彼女のために14項のモノローグ脚本を用意し、全体の脚本を完成させないまま、各撮影現場で思いついたシーンをその都度、撮影を行った。撮影中に浮かんだアイデアを次に撮る――その繰り返しによって、リンチ自身も完成形がどのようになるのか分からなかったと語っている。また、本編はすべてSONY PD-150(デジタルビデオカメラ)で撮影されたことでも知られ、日本の女優・裕木奈江も出演していることでも話題となった。そして2026年1月――リンチ没後1年、初公開から20年。二つの節目が重なるそのとき、衝撃の傑作が4K映像で甦る。

『インランド・エンパイア 4K』
2026.1.9(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

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