映画『ブゴニア』芸人・鈴木ジェロニモ×ISOが説き明かす!アカデミー賞候補作『ブゴニア』の“変”な魅力とは?

『哀れなるものたち』で世界を魅了したヨルゴス・ランティモス監督が、『ミッドサマー』のアリ・アスターと『パラサイト 半地下の家族』製作陣をプロデューサーに迎え生み出した、前代未聞の誘拐サスペンス『ブゴニア』。この度、ギャガ・ユニバーサル映画配給にて、2月13日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開。


『女王陛下のお気に入り』で人間存在の真実をあぶり出し、『哀れなるものたち』で世界を魅了したヨルゴス・ランティモス。一躍映画ファン最注目の監督となった彼が、再び誰も見たことのない痛快な傑作を生みだした!そんなランティモスと今回製作でタッグを組んだのは、狂気のその先を描いた『ミッドサマー』、『エディントンへようこそ』で監督を務めたアリ・アスターと、『パラサイト 半地下の家族』の製作チーム。この最強の布陣が、韓国の伝説的なカルト映画『地球を守れ!』(03)を、これ以上ないほど現代的なエンタメ作にパワーアップ。混沌とした時代を毒気たっぷりのユーモアで描き出す、まさに“今”こそ観たい、圧倒的エンターテイメント作品が爆誕した。

本作は、第98回アカデミー賞にて作品賞・主演女優賞(エマ・ストーン)を含む4部門にノミネート!作品賞候補入りは、ヨルゴス・ランティモス監督作としては『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』に続き三度目、製作でタッグを組んだアリ・アスターは記念すべき初のノミネートを果たした。主演のエマ・ストーンは、前作に続き本作でもプロデューサーを兼任し、37歳にしてアカデミー賞通算7部門ノミネートという、女性俳優として史上最年少の新記録を樹立!!さらに、キャストとプロデューサーの両部門で2度目の同時ノミネートを達成した初の女優という大記録も打ち立てている。脚本のウィル・トレイシーは韓国の伝説的なカルト映画『地球を守れ!』を現代的なエンタメ作に脚色し見事<脚色賞>に、作曲のイェルスキン・フェンドリックスは『哀れなるものたち』に続き二度目の<作曲賞>ノミネートを勝ち取っている。アカデミー賞受賞への期待がかかる中、映画好きとして知られるお笑い芸人・歌人の鈴木ジェロニモとライターのISOによるトークイベントが開催された!

本トークショーは映画上映後に実施。衝撃的なクライマックスに会場が騒然となる中、ステージに登場した鈴木ジェロニモは、本作の感想を「変だなというのが一番の感想です」と述べる。「それはいい、悪いという話ではなく、(意図的に)変だと思わせようとしてつくっているんだろうなと感じたんです。瞬間瞬間で『このシーンは好きだな』『このシーンは面白いな』というものがあるんですけど、トータルでつなげていくと、自分としては直線だったり、きれいな放物線だったりを描きたかったはずなのに、最終的にできあがったものが自分の予想もつかない形の折れ線グラフだったような。そんな感覚が“変だな”という言葉になりました」。この日、司会を務めたISOも「僕も最初は『何を見せられているんだ』という感想だったんですけど、ジワジワと後から面白かったという感想が湧いてきました。テーマとしては陰謀論とか分断だと思うんですけど、どちらを信じるのか、どちら側に立つのかという状況が絶えず揺れ動いていて。見るものに常に問いかけてくるような能動的な作品。見終わった後に『周りはどんな反応してるんだろう』とキョロキョロしてしまうような作品でした」と振り返る。

続いてISOが「陰謀論とか分断というものがテーマに描かれているという意味で、アリ・アスターさんが最近発表した『エディントンへようこそ』という映画にも共通する部分があるんですが、『ブゴニア』の方がよりカリカチュアされているというか。心理的なパワーゲームみたいなところがあって、エンタメとして昇華されているという印象がありました」と説明。さらにISOは、ヨルゴス・ランティモス監督の作家性として不条理な社会を描きつつ、人間の滑稽さを描くことにあると指摘する。「彼は今までの作品でも“支配”というものを描いてきました。閉じられた空間に人を閉じ込めて支配する『籠の中の乙女』や、特定のシステムやルールに支配される人間を描いた『ロブスター』や『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』など、不条理なルールを強いられる人の苦しみみたいなものを描いてきたんです」と前置きしつつも、「今回も不条理ですけど、片方がやられっぱなしではない。不条理の奪い合い、支配権の奪い合いみたいなところが、これまでのランティモス作品と違い、エンタメに昇華している部分じゃないかなと思いました」と語る。

エマ・ストーン演じるカリスマ経営者ミシェルと、ジェシー・プレモンス演じる彼女を宇宙人だと信じて疑わない陰謀論者・テディたちの、かみ合わない会話のやりとりも映画の見どころだ。「かみ合っていない会話って、コントでも笑いの要素として演じられることがあるんですけど、あのかみ合わなさって、そもそも目線が合っていないところがあると思っているんです」と芸人ならではの視点で切り出した鈴木が、「(両者が言い合うシーンでは一緒に映らずに)お互いの顔のカットだけが映し出されているのってまさにレスバ(レスポンスバトル)的ですよね」と指摘すると、ISOも「レスバというのは本当にその通りで。議論をせずに“いかに自分の主張が正しいか”を押し付け合うというので、けっこうなじみがある光景だなと思ったんですけど、それってTwitter(現:X)だなと思って。Twitterって議論じゃなくて『いかにこっちが正しいか』と、自分の言いたいことばかり主張しているというやり取りは、今の分断を象徴するやり取りだなと思いました」。

本作は2003年の韓国映画『地球を守れ!』が大好きだったというアリ・アスターが、ヨルゴス・ランティモス監督に同作を持ち込んだところから映画化がはじまった。「原作自体は大体同じような流れなんですけど、CEOがおじさんだったりといった違いがあります。ただ大きな違いとしては、もうちょっとB級寄りでばかばかしい映画なんですよ。(誘拐犯が)アンテナ付きのヘルメットをかぶったり、ビニールでできたスーツを着たりして。それってきっと陰謀論との距離が今よりだいぶ遠かったからだと思うんです」と解説するISO。「ポップな陰謀論という前提があって。そこが出発点になっていたんですけど、今だと『いるよね』という感じになってきた。リメイクした結果、今っぽくなったというところがあるんです」と付け加えた。
その上で陰謀論者自身、自分を陰謀論者と思っていないのではないか、と問いかけるISO。「この複雑な社会は非常に入り組んでいて。不条理なことに声を上げてもなかなか声が届かない。複雑ゆえにいまいち理解できないところもありますけど、陰謀論ってある意味それをすごくシンプルに語ってくれるんです。だから納得できないものを自分の中で腹落ちさせる手段としては、結構“癒やし”の手段なのかなと思ったりもするんです。社会に対して無力感を抱いたりする時も、陰謀論を身に着ければどんどん真相に近づいている気がするし、自分に価値を見いだすことができる。そういったシステムの欠如の結果、生まれたものなのかなと。それは共感はしないけど理解はできるなと思います。テディもまさにシステムに置いていかれた存在ですからね」。

続いて話題は、主演のエマ・ストーンの役作りについて。ISOは「エマ・ストーンは、これまでヨルゴス・ランティモスのいろんな映画に出てきたんですけど、毎回挑戦的な役柄をやっていて。今回は丸刈りになっているんですけど、その条件が『監督もやるよね』といったこと。彼女がやった後、すぐに監督も丸刈りになったそうです」と明かすと、LAの試写会において「丸刈りの人か、その場で(用意された特設理容室で)丸刈りにできる人だけが入場できるということをやって。丸刈りということにものすごく価値を付与していたんです」というエピソードを披露。その世界観作りの徹底ぶりに会場からも驚きの声が漏れた。
ふたりともこの日が2回目の鑑賞だったそうで、「2回目の方が全体のトータル感で見ることができて、楽しめました」と鈴木が語れば、ISOも「最初は結構振り回されていたので、2回目は落ち着いて見ることができた。すると構造的な部分が見えてきたし、音楽や映像の面白さに改めて気づくことができた」とコメント。今回、アカデミー賞にもノミネートされているイェルスキン・フェンドリックスが手がけた音楽や、「ビスタビジョン」という35ミリフィルムを使用して撮影した映像などについて、興味深い話を次々と明かした。

そんな濃密なトークイベントもいよいよ終わりの時間に。まずは鈴木が「僕は開口一番、『変でしたね』ということを言いましたが、今日ISOさんとお話しさせていただく中で“変だ”というのはものすごく人間的だと思ったんです。陰謀論はきれいすぎるというか、3Dプリンターで作られたように、形が整いすぎていると思っていて。きれいすぎることは実は違和感があるんじゃないかなと思うんですが、この映画が変だと感じたということは、ものすごく人間を感じたということなのかもしれません。ものすごく変で、ものすごく人間を見たい人にぜひ見てほしい映画だなと改めて思いました」。そしてISOも「本当にこの映画は、1回目よりも2回目の方が落ち着いて見られますし、発見もいろいろあるので。音楽もそうですが、映像もなかなか凝っているので。ぜひもう一度劇場で見て、いろいろと発見していただければ」と会場に呼びかけ、イベントを締めくくった。

『ブゴニア』
2月13日(金)公開
配給:ギャガ ユニバーサル映画

(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

ページ上部へ戻る